メッシュワークの2024年度(3期目)をふりかえる

日頃よりメッシュワークの活動にご支援をいただき、誠にありがとうございます。おかげさまで、合同会社メッシュワークは2025年4月1日から4期目を迎えました。2024年度の取り組みを振り返り、「人類学者の目をインストールする」とはどのようなことなのかを考えます。メッシュワークの2024年度の活動を大まかに把握できる内容です。
合同会社メッシュワーク 2025.05.01
誰でも

企業とのプロジェクト

2024年度は、これまで企業・団体に「人類学者の目をインストール」してきた経験をもとにモデルを作成し、人事・組織課題解決や地域と企業の関係構築に携わっていく年となりました。

2024年7月、創業時から取引のあった株式会社日本総合研究所(日本総研)と共同で人類学の知見を取り入れたコンサルティングモデルのサービス提供を開始しました。日本総研のクライアントが持つリアルな課題と、人類学がもたらす視点を往復させながら、企業の戦略や施策に活かしていくことを目指しています。このモデルから、すでに2社との案件を実施しました。人類学的アプローチを活用し、組織・人材開発、あらゆるステークホルダーとの関係構築において新たな視点を提供しています。 

本コンサルティングサービスについては、日本文化人類学会第58回研究大会にて、「未来志向の人類学はいかにして実現するか 大手シンクタンクと人類学ベンチャー企業との協働事例を通して」と題し発表し、その成果は論文として『文化人類学研究』に掲載されています。

本サービス提供に関して、東京新聞にて「人類学者が「経営コンサル」に加わったのはどうして? ビジネス界で注目を集める「アカデミックの手法」」と題した記事が公開されております。日本経済新聞でも、「人類学者がリサーチに参入 「参与観察」で対象に迫る」と題した弊社の紹介記事が掲載されました。本記事でも日本総研との協業サービスや、以前行われたUR都市機構との共同プロジェクトが紹介されています。メッシュワークが目指すクライアントや社会との関わり方についても言及されておりますので、ぜひご覧ください。日本

日本総研と共催した人類学的アプローチに関する研修の様子

日本総研と共催した人類学的アプローチに関する研修の様子

日本総研とのプロジェクトでは、東証プライム企業の長時間労働問題に人類学的アプローチを用いたコンサルティングを提供しました。そこでは、クライアント企業人事部担当者・日本総研コンサルタント、メッシュワークが合同チームを組織し、共同で1週間のフィールドワークを行いました。結果、これまで人事部員が気づけなかった顧客・従業員・経営者・協力会社・従業員の家族などを含むエコシステムが明らかになり、全体のエコシステムを最適化していく必要性が共有されました。事例に関して詳しく知りたい方はフォームよりお問い合わせくださいませ。

大学とのプロジェクト

多くの大学・研究機関と協業をすすめ、アカデミアとその周辺を架橋する活動も積極的に行なっています。

2024年12月、山梨県立大学・合同会社Poieticaと共催で「複雑さを捉える —感覚で探る人類学的リサーチとデザイン」と題した人類学的アプローチとデザインを、3日間の短期集中で学ぶ実験的・実践的プログラムを開催いたしました。開催レポートの他、参加者の方々との対談記事も配信しています。

参加者が作成した感覚を共有するためのプロトタイプの一例

参加者が作成した感覚を共有するためのプロトタイプの一例

また、2025年2月には、東京科学大学にて「複数視点を捉えるためのワークショップ:人類学的アプローチで未来シナリオの解像度を高める」と題したプログラムを実施。未来に生きる人々をより具体的に想定するために演劇的な手法を用いるワークショップを行いました。日本質的心理学会主催のワークショップでは、人類学の「参与観察」を体感するためのワークショップを実施しました。

メッシュワークの活動は、人文学研究者の新たなキャリアパスの先進事例としても注目されています。2025年1月には立命館大学主催の「キャリア・パスの脱構築:文系研究者のこれから」に比嘉が登壇し、文系分野の若手研究者が直面する就職難や非正規雇用の問題を背景に博士課程終了後のキャリア形成が重要な課題となる中、アカデミックポスト以外の新たな選択肢についてお話しました。また、3月には、京都大学の大学発スタートアップ創造ラボ vol.4「大学研究者が語る起業までのストーリー 」にも登壇し、起業の契機やスタートアップにおける研究者の役割・メリットなどについて語りました。

 「キャリア・パスの脱構築:文系研究者のこれから」Webサイトより

 「キャリア・パスの脱構築:文系研究者のこれから」Webサイトより

他分野の方々との対話

2024年度も人類学を超えて様々な業種・分野の方々と対話を行うことができました。人類学やビジネスの中に留まらず、様々な実践者との対話や実践を通し、変化し続ける知を創造していきたいと考えています。

2025年3月、人事図書館が主催する「現場を見る」〜人類学者の眼から学ぶ〜に比嘉・水上が登壇しました。長年フィールドワークを行い、組織や社会の“リアル”を見つめてきたプロフェッショナルである人類学者という立場から、企業や組織の“現場”をより深く理解するための人類学者の視点を活かした観察手法をお話ししました。

また、アイセック・ジャパンによる日本人学生を対象とした海外のNGO・NPO機関派遣の事前研修に、水上が登壇しました。本研修では、海外研修における学びが単なる知識のインプットではなく、異文化の中での実践と対話によって深まるものとなるようにはどうすれば良いのかについて、人類学の視点から学生にレクチャーを行いました。

アイセック・ジャパンでのレクチャーの様子

アイセック・ジャパンでのレクチャーの様子

2024年5月には、マイナビキャリアリサーチLab様のもと、「ネットワークではなくメッシュワーク、輸送ではなく徒歩旅行でキャリアを考えることの意味とは何か。これからのキャリア論に求められる人類学の視点とは?」と題し、法政大学キャリアデザイン学部の梅崎修教授と対談しました。

同年7月、メッシュワークもヒアリング協力者として参画した一般社団法人デサイロ様の「DE-SILO RESEARCH REPORT -人文・社会科学の未来を拓く30論点:研究エコシステムの『脱サイロ化』に向けて」が全編無料で公開されました。メッシュワークは、特に論点17の「人類学者の企業活動への参与」にて、比嘉・水上の言葉とともに多数引用していただいております。メッシュワークを起業するに至った思いや今までの活動の実績等を中心に、比嘉・水上が持つ人類学に対する考えや、昨今の人文・社会科学分野全体の潮流から見たメッシュワークの位置付けなどについても書かれております。

また、フラグヨコハマ主催の1日店長Bar#5に水上が店長として登壇し、様々な業種・分野の方とカジュアルな場で交流したほか、ジネンコロキウム #12にて、比嘉が合同会社吉村寫眞商店の吉村英紀さんと「複雑で豊かなことを捉える視点」について対談しました。

2025年1月には、Vlag yokohamaにて開催された「Reframe & Reimagine: 人類学で再定義するビジネスの未来」に水上が登壇しました。ストラテジックデザイナーの松薗美帆氏、KESIKI プロジェクトリードで写真家の牛丸維人氏と共に、人類学の「問い直す力」を活用し、ビジネスや組織の未来を再定義する可能性を探りました。

「Reframe & Reimagine: 人類学で再定義するビジネスの未来」webサイトより

「Reframe & Reimagine: 人類学で再定義するビジネスの未来」webサイトより

弊社のPodcast「人類学者の目」では、昨年度日本総合研究所の皆様や、同志社女子大学名誉教授の上田信行先生など他分野の方々をゲストにお迎えしました。

おかげさまでリスナー数・再生数は共に昨年度比3倍以上となりました。2025年度も豊かで多様な人類学の世界をお届けしてまいりますので、引き続きApple PodcastまたはSpotify等各種プラットフォームでお聞きいただけますと幸いです。

人類学の地平をひらく、教育・研究・探求活動

メッシュワークでは、クライアント案件だけではなく、「人類学者の目」を様々な人や分野にインストールしていくための試みを進めています。

本屋アルゼンチンle Tonneauとの共催のもと、「ソフトな人類学 〜人類学をビジネスに活かす編〜 」および「ソフトな人類学 〜裏・糸島フィールドワーク編〜 」を2024年5月に開催いたしました。アカデミックな観点から人類学を硬質・原理的に捉えるのではなく、柔軟な実践から人類学に触れる機会を作ることで世界の広がりを感じていただくことを目的として会を開催しました。「裏・糸島フィールドワーク」については、参加者の皆様による振り返りが下記noteにて配信されております。

裏・糸島フィールドワークでのワークショップの様子

裏・糸島フィールドワークでのワークショップの様子

また、創業年より開始したメッシュワーク人類学ゼミも、2024年度をもって3期目を迎えることができました。ゼミ生8名が半年間の学びを公開する人類学ゼミ展2025「ためらいながらも手を伸ばす」も2月に開催し、大変多くの反響をいただきました。

社会人向け人類学ゼミのゼミ生が参加者と交流する様子

社会人向け人類学ゼミのゼミ生が参加者と交流する様子

ゼミ生とメッシュワークによるトークイベント

ゼミ生とメッシュワークによるトークイベント

ゼミ生のトークイベントは、オンライン含め100名以上の方にご覧いただきました。

2024年度を振り返って

振り返りの記事を書きながら、「協業」や「実践」、「アプローチ」という単語が使用されていることに気づきました。これらの言葉は私たちメッシュワークが、誰かとともに活動することや、プロセスやアプローチ、態度を重視している結果であると言えます。私たちの仕事は、クライアントと私たち、クライアントと対象の方々、事前に想定できない人やモノなど、それぞれのステークホルダーと相互的な関係をつくり、共同で行います。一般的に行われるビジネス上の「リサーチ」では、対象から情報を得るために設計され、スクリーニングを行い、一方的に情報を取得されるだけの存在として対象者を扱います。しかし、メッシュワークが行う人類学的なアプローチにおいては、情報や視点を対象の方から提供していただくだけでなく、こちらの解釈や分析を対象の方々へ共有し、意見をいただき、互いに思想や視点の交換をできるよう努めています。このような取り組みを通して、新たな知を「共に」生成していきたいと考えています。

自らが変化し、初期の仮説や枠組みを問い直すことで、何かをわかろうとする。そうした「人類学者の目」をインストールするために、今後もメッシュワークは活動を続けます。

メッシュワークとともに、学ぶことや協働することなどに興味をお持ちの方はこちらの問い合わせフォーム にご連絡ください。ちょっとした相談からカジュアルな意見交換、共感したよ!という応援、お仕事のご依頼まで、お気軽にどうぞ。

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